『note主催 creator meetup』わざわざ平田さんとハヤカワ五味さんのお話からハンドメイド作家さんにお伝えしたいこと
こんにちは、minneの作家活動アドバイザー 和田まおです。
今日は、10/3に渋谷で開催された『note主催 creator meetup』というトークイベントに参加しましたので、そのレポートをハンドメイド作家さん向けにお伝えします。
今回登壇されたのは、今EC業界で一番注目を集めている、といっても過言ではないネットショップ「パンと日用品の店 わざわざ」の平田はる香さん。
そして、学生の頃から注目を集め、下着ブランド「feast」などを展開する経営者 ハヤカワ五味さん。
今日のテーマは
「デジタルでブランドのストーリーを語ること」。
お二人はそれぞれの信念のもと、インターネットを使った情報発信の第一線を走られており、IT業界内でも大変注目されている方々です。
「ハンドメイド作家さんにも共通するヒントがたくさんあるのでは」と思い、今日の観覧に至ったのですが、その注目度の高さが伺える超満員の会場でした。
会場は渋谷のhoops link tokyo。
席の都合で全体的にだいぶ斜めからの写真ですが、お許しください。
まずはお二人の自己紹介から。
「わざわざ」は、先日開催された「カラーミーショップ大賞」では3度目のノミネートとなり、大賞を獲得されています。
店舗とネットショップの売上構成比較など一通りご紹介くださいましたが、平田さんがnoteに初投稿した「山の上のパン屋に人が集まるわけ」という記事に詳しく画像付きで掲載されていますので、そちらをご覧ください。
お話の中で印象的だったのは以下の3つです。
1.東日本大震災がきっかけで、インフラ頼りになるガスで焼くパンをやめ、一時お店を閉めてまき釜にシフトしたこと。
2.実店舗のお客様は、全員がパンを買う。先にパンを買って、その後雑貨をゆっくり見る方が多いこと。
3.実店舗はパンの購入比率が多く、ネット販売は雑貨がほとんど。同じ店で、同じ商品を売っているのに、別のお店のように商品が動いていること。
続いて、ハヤカワ五味さん。
この春に多摩美術大学を卒業され、学生の頃からのご自身のブランド展開を継続されています。
学生の頃はオリジナルのタイツを作り、その売上が30万円。それを元手にワンピースブランドをつくったり、ランジェリーブランドfeastを立ち上げ。「シンデレラバスト」をコンセプトに掲げたところ、広く知られるきっかけになった、という経歴です。現在は、ダブルチャカという細身のワンピースブランドも展開されています。
ハヤカワ五味さんの自己紹介で印象的だったのは以下の3点でした。
1.高校生の時にお年玉3万円から始めて、大学の時には年間4000万円の売上。今では職業に。
2.ラフォーレ原宿での複数回のポップアップショップを開催し、2018年から常設店舗をオープンした。
3.会社に就職するよりも、自分で稼いで人を雇う立場になっては?、という意見を聞き、就職せずにそのまま経営者へ。
お二人の自己紹介の後は、お互いに質問しあったり、noteの司会者さんから質問が投げられたり……と、とても和やかに進んでいきました。
たくさんのお話の中で、いくつかQA形式でご紹介したいと思います。
ハヤカワ五味さん「わざわざが2015年頃に売上が伸びたときは、何があったんですか?」
ーー平田さん
わざわざは、機会損失をずっと消し込みながらここまできました。今でも借入金が0円。お小遣いからはじまっていて、初期投資100万円くらい。商品が売り切れてしまい、需要と供給のバランスが崩れている状態が、ずっと続いています。例えば、イタリアの食器メーカーの食器があります。これが、最小ロット5個で買えるんです。5枚が売り切れると10枚仕入れて、次は20枚……と、どんどんロットがあがっていく。いや、仕入れを100個にしたほうがいいよ、という話になり、増やした結果が2015年くらいの売上グラフに出ています。小売りは回転率が命で、助走期間が2012年~15年にあったからこそ、今があります。2014年まではスタッフ数は4人で、2017年に9~10人に。2016年から高額商品の取り扱いを開始しました。それまでは、仕入れたものが売り切れていて、もっと仕入れていればもっと売上を伸ばせたはずなんです。全ての機会損失をなくす、という動きになったのが、スタッフ増とつながっています。
質問「ブランドのブランディングに置いて最も重きを置いていることはなんですか?」
ーー平田さん
何もしてないですね。ブランディングという言葉自体がどうかと思っています。ブランドとは、ブランディングをしてできたものではない。今、超有名なハイブランドも、歴史をたどるとみんな「使命感をもって何かに取り組んだこと」が最終的にお客様からの支持を得たものなので「ブランディングをしたからファンを獲得した」という話ではない。
ーーハヤカワさん
お客様をふやしていきたい、伝えていきたい、と思った時に、ブランディングは武器になります。
店舗をだしていろんな人に知ってほしいな、となった時にどうしたらお客様を傷つけずにつたえられるか。私の下着ブランドの場合はナイーブなので、どうすれば悲しませずに知ってもらえるか、という事を考えています。
質問「SNSで発信するテーマはどのように決めていますか?また、noteはどんな目的がありますか?」
ーー平田さん
2016年くらいからSNSを開始して、インスタを軸足に自動で同じ内容がfacebookに流れるように組んでいます。Twitterは自分の事を投稿。noteでは、どのSNSでも受けがわるかったマネジメントの事などを投稿しています。noteの目的は、人間にはいろんなレイヤーがあると思っていて「パンと日用品」というふんわりした言葉に対して、山の中にわざわざきてくれるお客様とお店の話を面白がってくれる人がどこかにいるはずだ、と思って、noteを始めたんです。
ーーハヤカワさん
Twitterとnoteは、自分の会社への採用目的でやっています。
以前は採用で悩んでいて、テレビに出たくて出ているわけではなかったのですが、知ってもらうきっかけの一つとしてお受けしていた。そうすると、私のブランドは「課題解決」がテーマなんですが、ブランドイメージにふわっとした魅力を感じて応募してきた人は考え方もふわっとしていて、「自分が救われたい人」が多かったんです。会社としては、「救う側になる人」に来てほしくて。noteでの情報発信によって、靴の工場について書いたnoteの記事が、23万PVくらい見ていただけたんですけど、この記事のおかげでファッション系、小売り系の方と話しやすくなりました。
無料記事と有料記事を使い分けていますが、万が一1万RTされて、炎上しそうな内容の場合は有料にしています。そうじゃなければ無料、という考え方です。
質問「SNSの効果測定はしてますか?」
ーーお二人
してないです。
ーー平田さん
見たりはするけれど、SNSからオンラインストアの流入が20~30%です。そのほかはブックマーク経由で、かなりのファンの方々です。商品の更新は週に2、3回。お店からのアナウンスは、LINE@、Twitter、インスタ、などなどから毎日行っています。
ーーハヤカワさん
すごい!SNS経由の流入すくないですね。
ブックマークしてまでして何度も見に行きたくなる、って重要ですね。
ーー平田さん
新入荷、再入荷という表示をかなり頻繁に交換しています。
毎日ショップを見に来る価値があるように、見せ方、切り口を変える。
写真をたくさん撮影しているので、1アイテムに100枚はストック写真があります。写真を変えることで、印象がかわるので、楽しみにしてもらえているようです。新商品はあまりないのですが、SNSもネットショップも見に行く価値があるようになっています。
ーーハヤカワさん
お客様にとってはウォッチしがいがありますね!
他にも、人材採用のお話や、不安になったときの対処方法、興味がある人物についてなど、たくさんの話題がありました。これらの内容はTwitterハッシュタグ #notemeetup にたくさんの投稿がありますので、気になる方はそちらもご覧ください。
最後に、会場の方からのご質問を二つご紹介します。
「今日のお話で、売上のグラフが印象的でした。商品のソールドアウトが続いて供給が不足し、仕入れを増やす。供給が足りてくると、売れなくなったかな?と思う人もいると思うのですが、『売りすぎるとブランド力が落ちる、でもソールドアウトをキープしたい』。こういったバランスをどのように考えていますか?」
ーー平田さん
これは、とても難しくて。わざわざネットショップでは、在庫数を公開していて「残り 1850個」という感じで数字がリアルタイムに見えます。そうすると、人気の商品は、1時間で一瞬で在庫がなくなっていくのですが、その様子を、お客様たちが楽しんでツイートして盛り上がっているんです。まるでエンタメみたいに。売れる商品だけではなく、売れない商品も見られていて、「まだこんなに在庫があるから、買ってあげなきゃ」という感じで、売れないことを応援されていたり。在庫を積みすぎてバランスが崩れると死ぬので、何個積むのが良いかは、いまでも実験中です。まだパイはみえていません。
ーーハヤカワさん
私は在庫積みすぎて倒れる、って思ったのがこれまで3回あります。
商品の特性にもよるので、下着の場合は「よし、買うぞ」という感じで購入には至らず、もっと日常に近いと思っています。
500着が1時間で売れる、ということもありましたが、購入者全員がブランド愛が深いか?というと、ブランド愛の深いお客様は半分くらいでした。
下着の場合は日常使いで買える体制を用意し「常に在庫が切れないように」という事を考えています。
質問「個人で作家をしています。すべて制作から販売まで、すべてを自分でやっていると限界を感じています。どのように広げたらよいでしょうか?」
ーー平田さん
投資、という考え方が必要ではないでしょうか。利益設定もですし、投資ができる形がまず必要。投資の対象はたくさんあって、今の現状の自分を打破するには、ある程度のリスクをもって投資しないとリターンがこないとおもっています。
ーーハヤカワさん
レバレッジということを意識しています。1時間働いて1の成果だと、ずっとそのまま。1時間で3とか5の成果をださないといけない。
では、その仕組みは、価格設定なのか、商品の見せ方なのか?その仕組みをつくらないといけない。同じリソースでどれだけの成果をあげていくか、を考えることが大切ではないでしょうか。
ここまで1時間余り、大変濃厚なトークにも関わらず、その熱気を十分にお伝えできず申し訳ない限りですが、平田さんとハヤカワさんの情報発信はとても勉強になる点が日々満載ですので、ぜひお二人の今後の活躍にもご注目ください。
今日のトークを聞いて、ここに書ききれなかった話を含めて何度かキーワードとして出てきたことが「次の投資をできる利益設定」という言葉です。
自分の商品が売れて、次にもっと幅を広げたい、と思った時に、利益が足りないと仕入れの量を増やしたり設備投資をするキャッシュが不足し、機会損失が原因で売上の鈍化を起こしてしまいます。これは、「原価に人件費(作業代)を入れましょう」と日々ご案内していることに直結しています。投資ができないからお客様に注目されている時に商品を提供できず、機会損失になってしまったという事は、ハンドメイド作品の販売活動でもまったく同じ事が言えます。
「わざわざ」のSNS流入が低めな点については、ファンとの関係性を長年のショップ運営を通して積み上げてきたからこそ、の素晴らしい数字だと思います。これは日ごろminneの講座でも「SNSは必須ではない、必要な人だけ活用すればよい」とお伝えしていることろに繋がります。SNSを使わずに、十分な利益を得ることができていて、その売り上げに作家さん自身が納得していれば、無理にSNSを使うことは無いとおもっています。
また、ブランドとは、最初からブランドだったわけではなく、ブランディングが成功してブランドが完成するのでもなく、「使命感をもって何かに取り組んだこと」が最終的にお客様からの支持を得たものであり、結果としてブランドとして認知された、というお話も、大変参考になる内容でした。
最後になりましたが、登壇されたハヤカワ五味さん、平田さん、イベント主催のnoteスタッフのみなさま、大変貴重なお話をありがとうございました。
minneは、noteから作品を購入できる「note for shopping」に対応しております。こちらもぜひご活用くださいね。
今後もminneでは、このようなイベントレポートを時々お届けできればと思っております。
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